クラフトビール入門講座
「パッケージング」とは?缶ビール・瓶ビールの充填・包装工程について紹介!
2024.12.04
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ビールの「パッケージング工程」と聞いて、イメージが湧くでしょうか? ひとことで言えば『ビールを容器に充填する工程』ですが…決して充填する『だけ』ではありません! もっと正確に表現するなら、『醸造されたビールを出荷できる状態にする工程』なのです。
今回は、サッポロビール工場のパッケージング部所属の飯村が、あまり知られていない「パッケージング」の奥深さについて紹介します!
充填・資材・包装とは?パッケージングの役割
贈り物や結婚式に使って頂けることも多いビール製品。丁寧に醸造された中味液を高品質のままお届けするためには、パッケージング工程におけるマルチな管理が重要です。
充填・密封の役割
今まで工場のタンクや配管で守られていたビールが、満を持して外の世界に飛び出す瞬間です。 そんな外の世界には、異物・微生物・酸素などビールの敵がたくさん! 充填関連の設備・衛生管理は、やはりパッケージング工程の「肝」と言えます。
そしてビールが入った容器は、少なくとも数秒以内には密封されます。ビールがしっかりと外界と遮断され、かつ締めすぎない絶妙な加減が重要なため、設備はコンマ1ミリの単位でシビアに調整されます。
外装の役割
容器・箱・ラベルなどの包装資材は、ビールの原料と同じくらい大切に管理される必要があります。 その理由は、単なる見た目の良さの他にも、「安全」や「食品表示」に影響を及ぼす重要なものであるためです。 缶ビールの段ボールが破れていたら、お客様が運んだ時に缶が飛び出るかもしれません。 また、瓶ビールのラベルが剥がれてアルコール度数や品種がわからなくなったら、お客様がノンアルコールと混同してしまうかもしれません。 色々な「かもしれない」を想定して、外装品質にも厳しい出荷基準が設けられています。
パッケージング工程の流れ
かなり大まかにパッケージング工程を説明するとこんな感じ。缶ビールも瓶ビールも、基本的な流れは全く同じです。そして、各工程の合間には多くの検査が挟まっています。
- 1. 容器洗浄
- 2. 充填・密封
- 3. 印字
- 4. 包装・梱包
- 5. パレタイジング(積みつけ)
では、1つ1つ説明していきましょう!
1.容器洗浄
缶もびんも、充填する前にしっかり洗浄します。 特にびんは「リターナブル容器」であり、回収した使用済みのびんを再利用するため、この洗浄工程が品質を握るカギとなります。 リターナブル容器は、長く屋外に放置されてから回収されることもあるため、木の枝が入っていたり、砂まみれだったりすることもしばしば。想定外の汚れがやってきたときにも対処できるように、約30分かけて念入りに洗浄されます。 びんのラベルもこの洗浄工程で剥がされる仕組みになっており、新しい製品に生まれ変わるための準備はここで全て整います。
2.充填・密封
容器内を一度炭酸ガスで置換し、泡立たないように圧力を調整しながらビールを充填します。缶とびんの充填原理はほとんど同じですが、各容器の特性により少しだけ異なる点があります。気になる方はこちらの記事もご覧ください!
(引用元)【缶ビールと瓶ビールって違う?同じ?】味や炭酸の量・賞味期限の違いについてご紹介
ここでは、缶ビールの特徴的な密封方法について解説します。缶胴と缶蓋はがっちりくっついていますが、接着剤を使用しているわけではありません。工場見学をされたことのある方はご存知かもしれませんが、「二重巻締」という特殊な構造を形成することにより、密封性を担保しています。この巻締具合を決める設備の調整は非常にシビアで、熟練の技が必要なのです。
3.印字
外装品質の点では印字はかなり重要です。 お客様にご迷惑をおかけしないように、あるいは万が一トラブルがあった際に製造工場や製造時間を確実に遡れるように、「読める印字を全ての製品に付与する」ことが必要になります。 そのため、印字をした後には必ず検査をし、確実に印字が読み取れる製品のみが出荷されるようになっています。
何気ない部分に見えて、かなり細かく管理されています。普段気にしていなかった方も、ちょっと見てみてくださいね。
4.包装・梱包
缶とびんは、このあたりから設備も大きく異なってきます。
缶の梱包資材:スリーブ(6缶パック用)・段ボールカートン
6缶パックに使用される紙資材「スリーブ」は、スーパーマーケットなどでよく見かけますよね。 上部にミシン目が付いており開けやすい形になっていますが、試しにミシン目を使わずに下から開いてみてください。 一枚の紙が上手に折り込まれ、しっかりと缶がホールドされていることがわかります。 ちなみに工場では、あんな複雑な構造でも機械で成形できます。産業機械ってすごい!
びんの梱包資材:P函
「P函」は聞き慣れないワードかと思いますが、酒屋さんなどでよく見るプラスチックケースのことです。こちらもびんと同様に「リターナブル容器」のため、機械で洗浄されたのちに汚れや割れがないか検査されてから使用されます。 P函の色は、各社で異なります。サッポロビールは綺麗な赤色です。
5.パレタイジング
「パレット」とは、物流で使用される荷台のこと。「パレタイザー」という機械を使って製品を綺麗に積み、倉庫へ送り出すまでがパッケージングの役割で、以降は物流の世界に入っていきます。
ということで、約1ヶ月かけてたくさんの工程を経てきたビールづくりもここで終了。 あとは皆さんの元へお届けするのみ。いってらっしゃい〜!
最後に
筆者も新入社員時代、友達に「パッケージング部って何?」と聞かれると 『えっと…中味液を充填する部門』なんて答えていたときもありました。 (「え、飯村が詰めてるの?」「いやそうじゃなくて機械が…」と…)
でも今なら、『製品の最終保証をしてんのよ!!』と声を大にして答えられます。
丁寧に醸造されたビールを自信を持って送り出すためには、 今回紹介した「パッケージング」が非常に重要だということがおわかり頂けたでしょうか?
醸造家だけでなくたくさんの人の想いが込められたビールを、これからも楽しんで頂ければ嬉しいです!
サッポロビール株式会社
飯村 瑞季(Iimura Mizuki))
<略歴>
2022年東京農工大学大学院農学府応用生命化学専攻修士課程修了。
同年サッポロビール株式会社入社。
入社後は千葉工場パッケージング部に所属し、充填・包装工程の管理や技術開発に取り組む。
学生時代、「注ぎ分け」の魅力を提供するビアスタンドで勤務した経験から
ビールが持つパワーや奥深さを自らの言葉で発信したいと考え、記事執筆の社内副業に従事中。
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