クラフトビール入門講座 ビールの原料の「麦」について解説!大麦と小麦の違いは?

ビールの原料の「麦」について解説!大麦と小麦の違いは?

「麦酒」と書いてビールと読むように、ビールは「麦」のお酒です。ここではビールに使われる麦とはどのようなものか、ビールの製造工程と麦の種類による味わいの違いについても触れながら解説します。

ビールの原料となる「麦芽」

ビールの原料にはモルトとも呼ばれる麦芽(ばくが)を使用します。麦芽とは麦の種子を発芽させて乾燥したものです。麦を発芽させることよって、麦に含まれるデンプンやタンパク質を分解する酵素(アミラーゼやプロテアーゼ)が生成されます。ビールの仕込工程においてこの酵素が働くことで、ブドウ糖や麦芽糖などの糖や、アミノ酸がつくられ、その後の発酵工程において酵母の栄養となるのです。酵母はデンプンやタンパク質をそのまま栄養とすることができません。糖やアミノ酸を栄養として元気よく酵母が増殖し、その後発酵によりアルコールと炭酸ガスを生み出します。麦そのもの状態ではなく(一部に麦が使われるビールもありますが)麦芽が原料に使用される理由は、酵母が健全に働ける環境をつくるためなのです。

大麦麦芽が選ばれる理由

ビールの原料に使用される麦芽は主に大麦由来のものです。大麦麦芽が使用される理由には、含まれるデンプンとタンパク質の量がビールづくりに適している、発酵のために酵母の栄養となる糖とアミノ酸をつくる酵素の力が優れている、などが挙げられます。また、大麦には麦の粒(穀粒)が2列に並んだ二条大麦と6列に並んだ六条大麦があります。一般的に二条大麦の方が六条大麦より大きな種子が育ち、種子に多くのデンプンやタンパク質が含まれるため、ビールの醸造には主に二条大麦が用いられます。

麦芽は麦を「製麦」してつくられる

大麦を発芽させ、乾燥させることにより麦芽をつくる工程を「製麦(せいばく)」と呼びます。発酵工程において酵母の栄養となる糖やアミノ酸をつくるための酵素を生成させ、大麦種子中の成分を醸造で利用されやすい状態に変化させるための工程です。製麦は大きく「浸麦」「発芽」「焙燥」「焙煎」の4ステップからなります。はじめのステップは浸麦(しんばく)です。麦を水に浸して発芽のために必要な水分を与えます。麦は水を吸収することで発芽の準備を始めます。次のステップは発芽です。水分を含んだ麦は発芽を始めます。この時、麦から熱や炭酸ガスが発生するので定期的に麦をかき混ぜて環境を調整します。次に焙燥(ばいそう)です。発芽した麦の生育を止めて麦を乾燥させます。発芽によって生成した酵素が熱で働きを失って(失活して)しまわないように約50℃から徐々に温度を上げて80℃を超えたあたりで乾燥を止めます。最後のステップが焙煎(ばいせん)です。ロースターで加熱することで酵素が失活してしまいますが、麦芽に褐色から黒色の焦げ色が付きます。こうして濃色のビールに用いられるカラメル麦芽や黒麦芽と呼ばれる麦芽ができあがります。

焙煎した麦芽を使うことで濃い色のビールができる

日本では馴染み深い淡い黄色のビールには焙煎していない、あるいは比較的穏やかな温度で焙煎した淡色麦芽(ペールモルト)が多く使用されています。焙煎による焦げ色のない、麦芽由来の淡い黄金色がビールに現れます。一方で焙煎した麦芽を使用するとビールに焦げた麦芽の色が現れ、褐色から黒色のビールができあがります。この時ポイントとなるのは、焙煎した麦芽の使用する比率です。前述の通り、焙煎した麦芽では含まれる酵素が熱により失活しており、デンプンやタンパク質を分解する力がありません。そこで酵素の力が強い淡色麦芽をベースに使用し、そこにカラメル麦芽や黒麦芽を適量ブレンドすることでビールに色と風味を与えつつ、酵素の力を維持します。そうして仕込工程において、デンプンを糖に分解する「糖化」の進行を妨げることなく醸造を行うことができるのです。

麦芽の種類による味わいの違い

淡色麦芽を多く使用した淡い黄色のビールにはチェコで生まれた【ピルスナー】やドイツ発祥の【ケルシュ】、その他にも【へレス】や【アメリカンラガー】といったスタイルのビールがあります。麦芽由来の豊かな香りが感じられるものが多いです。さらに、ホップの香りをより際立たせたい場合や、果実やスパイス、ハーブなどの副原料の風味を主張したい場合も、比較的穏やかな風味の淡色麦芽を多く使用してつくられることがあります。また、焙煎した麦芽を一部使用することで褐色から銅色に色付いたビールとしては【ブラウンエール】や、ドイツ語で「暗い」を意味する【デュンケル】、ドイツ北部発祥の【ボック】、あるいは【ダークラガー】などの様々なスタイルがあります。カラメル麦芽やクリスタル麦芽と呼ばれる麦芽由来のカラメルのような香りやトーストのような香ばしさがあり、麦の甘味やコクを感じられるモルティな味わいのものが特徴的です。高温で焙煎した黒麦芽を使用した黒いビールとしては、ロンドン発祥の【ポーター】、ポーターがアイルランドで進化して生まれた【スタウト】、南ドイツ発祥の【シュバルツ】などがあります。焙煎温度が高く麦芽の焦げた風味がより強く感じられ、カカオのような苦味や、タバコのようなスモーキーな香りがするビールもあります。同じ大麦由来の麦芽を使用していても、麦芽の焙煎度合いと、それらをブレンドする割合によって様々な色と味わいが生まれるのが面白いところです。

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小麦や小麦麦芽を使ったビールとその味わい

ビールの中には大麦麦芽の他に小麦麦芽や小麦そのものを使用したビールもあります。苦味が控えめで軽い口当たりのスタイルが多く、ビールの苦味が苦手な方、白ワインや日本酒が好みの方にもおすすめです。小麦は大麦に比べてタンパク質を多く含むことから、ビールに濁りを与え、くすみのかかった白っぽい色になる傾向があります。小麦麦芽を50%以上使用してつくるドイツ発祥の【ヴァイツェン】は、バナナやクローブのようなフルーティーな香りが感じられ、泡立ち、泡持ちが良いのが特徴です。また、小麦に加えてコリアンダーシードとオレンジピールを使用したベルギー発祥の【ベルジャンホワイト】は、オレンジの爽やか香りとほのかな酸味が感じられ、清涼感のある飲み口です。その他にも滑らかな口当たりの【ウィートエール】や、カクテルのようにラズベリーやクルマバソウのシロップを入れて楽しむ【ベルリナーヴァイセ】などが、小麦あるいは小麦麦芽を使用したビールとして知られています。

ライ麦やオーツ麦を使用したビールも

大麦と小麦の他にもライ麦やオート麦(えん麦)を使用したビールもあります。【ライビール/ロッゲン】はライ麦を30%以上使用してつくられるビールです。バナナやクローブのようなフルーティーな香りとともにライ麦由来のパンのような味わいを感じられます。【ヘイジーIPA/ジューシーIPA】は小麦とオーツ麦を原料の一部に使用しており、小麦やオーツ麦由来のタンパク質により白濁したオレンジ色が特徴のビールです。パッションフルーツなどのトロピカルフルーツのようなホップの香りと、少しトロっとしたジューシーでクリーミーな口当たりで、果汁感が強いのが印象的です。

麦芽の使い方がビールの骨格を決める

ここではビールの原料の一つである麦(麦芽)について解説しましたが、ビールをつくるには他にもホップ、水、酵母が必要です。さらには副原料として果実やスパイス、ハーブ、コーヒーや紅茶などを加えるビールも多く生み出されています。他のお酒と比べて豊かな多様性を持つのがビールの魅力です。ブルワー(醸造家)はそれぞれの原料にとことんこだわり、どの原料をどのくらいの割合で、どのタイミングで加えるかなどを緻密に計算、試行錯誤しながら理想のビールを追い求めています。その中でも麦(麦芽)は、使用する種類やブレンドの割合によって味わいや色が大きく変化するので、麦はビールの基本的な骨格となる部分を決める重要な原料と言えるのです。

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  • ペンネーム:遠藤 諭
  • 自己紹介:大学での試験醸造の経験からビールの世界にハマり、美味しいビールを探求中。ビールを通した出会いとつながりを大切にして、多くの方にビールの奥深さを伝えたい!北海道札幌市出身。
  • びあけん1級合格回数:2回
  • 居住エリア:神奈川県
  • 好きなビール:志賀高原ビールMiyama Blonde(玉村本店)
  • 好きなビアスタイル:セゾン・ファームハウスエール
  • 最近注目しているブルワリー: Streetlight Brewing(合同会社札幌醸々)
  • 最近飲んで美味しかったビール:green sky blue grass(Streetlight Brewing) 2023年6月、北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOにて初開催された「CRAFT BEER FIELD IN F VILLAGE 2023」で提供されたファームハウスエール。ネルソンソーヴィンホップの香りとベルジャンイースト由来の香りが見事に調和する最高の一杯でした。

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