クラフトビール入門講座
発泡酒とビールって何が違うの?今さら聞けない疑問を解説!

発泡酒とビールって何が違うの?今さら聞けない疑問を解説!

1.発泡酒とは何か

発泡酒と聞くと、『ビールと似ているけど、それよりは安いお酒』をイメージする人は多いのではないでしょうか。実は発泡酒は日本独自の品目で、原産国ではビールでも、日本では発泡酒と表記される商品もあるのです。

1-1.ビールの定義

まず、原料からビールと発泡酒の違いを知るために、ビールの定義について、2018年改正の酒税法(2023年8月現在)から必要な部分を抜粋します。

定義(1)

麦芽、ホップ、水および、麦その他政令で定める物品を原料として発酵させたもの。その原料中麦芽の重量が、ホップ及び水以外の原料の重量の合計の50/100以上のもの。

定義(2)

(1)に、ホップ又は政令で定める物品を加えて発酵させたもの。その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の5/100を超えないもの。

(1)は改正前、麦芽以外の原料の重量の合計が麦芽の50/100を超えないもの、となっていました。つまり、麦芽比率2/3以上。改正後は1/2以上となり、要件が緩和されています。②は新たに追加された項目で、決められた重量未満であれば果物、ハーブなど香味付けの副原料を認めるというものです。

原料で、(1)または(2)を満たさないものが発泡酒です。つまり、ビールに認められていない原料や、規定以上の量を使用する場合です。冒頭のイメージは①を満たさない節税型発泡酒のもので、麦芽比率が50%未満であれば、ビールより税額は低くなります。

また、発泡酒の原料については別途、 ・麦芽、または麦を原料の一部とした… との定義もあり、麦芽を必須としない点もビールとの相違点です。

今回は、このビールと発泡酒の原料を軸にして、日本での節税型発泡酒の成り立ちと今後、そして発泡酒とクラフトビールの意外な関係を見ていきたいと思います。

2.ビールの原料

2-1.日本での定義

日本初のビールの定義は、1904年、麦酒税法の改正時に行われました。この時、『麦芽、ホップ、水を原料として麦酒酵母を加えて発酵したもの、その外麦芽の重量の3/10以内の米を原料としたもの』という文言が加えられたのです。当初から、副原料として米の使用は認められていました。 1901年にビールへの課税が始まった時には、肝心の何がビールなのかが明示されていなかったのです。

2-2.副原料の追加

その後、副原料は段階的に追加されます。 ・1908年…とうもろこしと砂糖を追加し、副原料の比率を麦芽重量の5/10未満まで引き上げ ・1920年…馬鈴薯、でん粉 ・1940年…酒税に関する法律が酒税法に一本化され、こうりゃん、その他政府が指定したものと苦味料、着色料 追加された副原料はでん粉質の野菜や穀物が主で、主食の米や麦を確保するため、代わりとなる糖質源を探したようにも見えます。 戦後も、ビールの原料はほぼ同じように定義されました。

3.発泡酒の誕生

戦中から戦後にかけて、麦芽比率の低い、あるいは麦芽を使用しない、ビール『のような』商品が登場します。

3-1.きっかけは食料事情

発端は、戦中の代用ビールでした。軍の戦意高揚のためビールは重要でしたが、国内の食料事情のひっ迫により、麦芽、米の代わりに甘藷(さつまいも)を使用した『イモ・ビール』の研究が始まります。

3-2.発泡酒、店頭へ

戦後も、しばらくは穀物の酒への使用が制限されたため、甘藷を主原料とした商品開発を各社が続けます。この頃はまだ酒税法に発泡酒は存在せず品目は雑酒、税額はビールより低かったため、より安価で販売されました。『ミリオンビーア』、『ラビィ』など次々と発売される中、意外な所では養命酒も新会社を設立、1957年に『ライナービヤー』を発売しています。

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引用元:ライナービヤーのポスター(養命酒製造株式会社 公式サイトより)

3-3.市場からの退場

しかし、『ビーア、ビヤーと名乗ることで消費者にビールと誤認させる』と当時のビール4社が問題視して業者を提訴したことが響いたのか、また宝酒造やサントリーがビールで市場に参入したため、味で勝負出来なかったのかは定かでありませんが、発泡酒は段々と姿を消していきます。

4.発泡酒の復活

4-1.バブル崩壊

1967年の宝酒造撤退以降、ビール業界は4社体制が続きますが、バブル崩壊の前後から取り巻く情勢が変わり始めます。 1990年ビール4社が希望小売価格は参考価格である旨の新聞広告を掲載、1993年にはダイエーが直輸入したビールを安価で販売するなど価格破壊の流れが鮮明になる中、発泡酒に目を付けたのがサントリーでした。当時の酒税法では、麦芽比率2/3未満が発泡酒とされ、税額もビールより低かったのです。サントリーは麦芽比率をその上限に近い65%に定めて『ホップス』を開発。それまでのビールより45円安くして、消費者の味方として市場に受け入れられます。 ここから大手各社に国税庁を交えた、いたちごっこが始まります。

4-2.相次ぐ新商品

翌年、サッポロが麦芽比率25%未満でさらに税額の低い『ドラフティ』を発売。『ホップス』より20円安くして勝負を挑みます。そして1996年、酒税法改正で発泡酒増税の際、麦芽比率50%以上の発泡酒はビールと同じ税額に変更されました。このままでは『ホップス』は、発泡酒のまま税率だけビールと同じになってしまいます。当然サントリーも手をこまねいていたわけではなく、増税前の同年春、原料に糖化スターチを採用した麦芽比率25%未満の『スーパーホップス』を『ドラフティ』よりさらに10円安く市場に投入。その後、キリン『淡麗』、アサヒ『本生』も市場に参入して大手4社が揃い踏み、発泡酒は年々シェアを拡大しますが、2003年に再度増税されたことで風向きが変わります。 大手各社は、さらに税額の安い品目を開発し、サッポロが麦芽を使用しない『ドラフトワン』(現在の品目:その他の醸造酒(発泡性))、サントリーがビールに焼酎を加えた『麦風』(同:リキュール(発泡性))を発売。これらは現在の新ジャンルの始祖となり、税額も発泡酒よりさらに低かったため、発泡酒は、復活からわずか10年程度で再度シェアを落とすことになります。

5.発泡酒の今後

5-1.税額の統一

2018年の酒税法改正では、原料に関する変更以外に、以下の2つが盛り込まれました。

・2023年…新ジャンルの発泡酒への統一 これによって、ビール類の品目は、ビール、発泡酒の2本立てとなります。

・2026年…ビール、発泡酒、新ジャンルの税額を統一 2020年、2023年と段階を経て、2026年10月には350ml缶で約54円に統一されます。 2018年時点の税額はビール77円、麦芽比率25%未満の発泡酒約47円、新ジャンル28円だったので、発泡酒はビールより約30円、新ジャンルは約49円安かったのですが、この差が0円となり、しかも発泡酒と新ジャンルは値上がりとなります。

税額の変更とビールとの差額※2※3

品目 2018年 2020年 2023年 2026年 税額増減
(2026年-2018年)
ビール 77円 70円 63円 54円 -23円
発泡酒※1 46円
(-31円)※2
46円
(-24円)
46円
(-17円)
54円
(0円)
+8円
新ジャンル 28円
(-49円)※2
37円
(-33円)
46円
(-17円)
54円
(0円)
+26円

※1:麦芽比率25%未満 ※2:カッコ内はビールとの差額 ※3:税額は小数点以下切捨て

それでもビールよりはまだ価格の優位性があるようですが、大手各社はこれを機にビールに回帰する動きを見せており、節税型発泡酒の売上は頭打ちになることが予想されます。

5-2.新商品の開発

今後の節税型発泡酒の命運は、糖質ゼロ、プリン体ゼロといった機能性商品や、ビアカクテルや外国ビール、クラフトビールのような個性的な味わいを持つ商品の開発が鍵を握る、と思われます。

6.クラフトビールなのに発泡酒?

昨今クラフトビール(小規模醸造所)が注目を集めていますが、実はここにも発泡酒が相当数含まれています。 ここまで見てきた節税型発泡酒を思うと意外ですが、これには2つの理由があります。

・製造免許取得の条件 ビール製造免許は年間製造数量60kl以上が必要ですが、発泡酒の製造免許は1/10の6kl以上で取得出来ます。そのため、小規模のブルーパブを中心に発泡酒免許での参入が増えています。

・副原料の使用 2018年の酒税法改正で、政令で示した物品を香味付けに使用してもビールと名乗れるようになりましたが、認められていない原料や、規定以上の量を使用すると発泡酒になってしまいます。

個性を追求するために、クラフトビールであえて米麹や醤油を使用したり、麦芽を一切使用せず、大麦や小麦を主原料とした商品もありますが、これらも、品目は発泡酒となるのです。

また、例えば同じ『サンクトガーレン』の商品でも、さくらの花びらや葉を使用した『さくら』はビールになりましたが、『湘南ゴールド』は果物を麦芽重量の30%使用していることから発泡酒のままです。しかし麦芽比率は高いので、税額はビールと同じになります。

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サンクトガーレン『さくら』のラベル 上が発泡酒、下がビール時代の物。発泡酒の方には、その理由が明記されています。

7.ビールと発泡酒の違い

ここまで原料を軸として、発泡酒とビールの違いを見てきました。では、発泡酒とは一体何なのでしょうか。

結論から言うと、発泡酒もビールなのです。

前述の通り、品目の定義はあくまで酒税法上のもので、そこに優劣がある訳ではありません。節税型を含めて、日本においてはむしろ、ビール造りの工夫や個性、多様性を包含しているのが発泡酒というカテゴリと言えるのです。 ですので、発泡酒だから買わないとか、ビールより劣っていると思ってしまうとすれば、とても勿体ないと思います。

昔、中途半端にビールを知ったころ、サッポロとロイズコンフェクトがコラボした『ショコラブルワリー』という限定商品がありました。発泡酒だからという理由で飲まなかったことを、今でも悔やんでいます。

店頭で珍しい商品を手に取って、品目が発泡酒だったらむしろチャンスです。ラベルを見て意外な原料や、聞いたことのない原料が表示されていたら、ぜひ購入してみて下さい。 ビールの世界が広がる、きっかけの1本になるかもしれません。

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  • ペンネーム:長畑 勝則
  • 初代びあけんマスターズ。初回1級を最高得点で合格。その後、びあけん初の2級/3級同時満点賞獲得。昼飲みが好きで、特にビアガーデンでビールを飲みながら読書をするのが至福の時。ビールのおかげで出会えた人達と、イベントなどで楽しく乾杯させてもらっています。座右の銘は『祭ある所に酒あり』。
  • びあけん1級合格回数:7回
  • 居住エリア:北海道札幌市
  • 好きなビール:NORTHCOAST『OLD RASPUTIN』
  • 好きなビアスタイル:ヘレス、ケルシュ
  • 最近注目しているブルワリー: Streetlight Brewing。地元札幌のブルワリー。コラボも積極的に行っていて今後が楽しみです。
  • 最近飲んで美味しかったビール:うちゅう『QUARK』,『KABUKI』。ほとんどスムージーの味わいですが、ビールのポテンシャルを改めて感じました。

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