クラフトビール入門講座
ホップってなに?ビールの美味しい苦味のヒミツとは?!

ホップってなに?ビールの美味しい苦味のヒミツとは?!

ホップって何? ビールの美味しい苦味のヒミツとは? ビールの原材料に含まれているホップ。「ビール特有の苦味のもとになるもの」ということは理解していても、それ以上のことはあまり深く考えたことがないのではないでしょうか?今回は、そもそもホップとはどのような植物なのか、ビールの歴史におけるホップの役割と使われ方、現在よく利用されている主なホップの種類とその特徴などについてお話していきたいと思います。

ホップってどんな植物?

まずは植物としてのホップについて解説します。ホップはアサ科カラハナソウ属の多年草。つる性植物で収穫期である8~9月には5メートルにまで生育します。

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ホップ畑

冷涼で乾燥した土地を好むため、日本においては、北海道や東北での栽培が主で、都道府県別の生産量では、岩手県が一位となっています。しかしながら、最近では京都府与謝野産のホップを利用したビールが話題になるなど、その産地も広がってきているようです。 ホップは雄株と雌株が存在する植物で、「雌株」が成長すると松かさのような果実ができます。

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松かさのようなホップの雌花

この見た目から

  • 球花
  • 毱花
  • 毱果
    などと呼ばれており、これを収穫しますが、ビールに使われるのは未受精の雌株のみです。受精してしまうとビールに与える香りに影響が出てしまうため雌株だけで育てており、花粉が飛んでくると思われる範囲に自生する雄株を見つけたら駆除するというほどの徹底ぶりです
    。 球花には、苞(ほう)の根元に黄色い粒のようなものがあり、これがビールに独特の苦味や香りを与えるルプリンというものです。

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ホップの雌花の断面。
黄色い粒々したのがルプリン。

ホップの学名は「フムルス・ルプルス」ですから、このルプリンこそが、ホップの重要部分と言えますね。 なお、収穫されたホップの球花は主に乾燥、圧縮してビール製造用に使用されますが、最近では色々な保存方法や、利用方法が出てきています。これについては後述します。

ビールにホップが使用されたのはいつ頃?その役割は?

次に、ホップの使用の歴史とビールにおけるホップの役割についてみていきましょう。 ビールは古代メソポタミアの時代から飲まれてきたと言われており、ホップは古代エジプトの時代にはハーブとしてすでに存在していたという記録があります。
ビールにホップが使用されるようになったのは14世紀ごろからとされています。

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中世ヨーロッパにおいては、修道院を中心にビール製造が行われていましたが、当時はグルートと呼ばれるヤチヤナギコリアンダーなどの薬草を混ぜたものが風味づけと腐敗防止のために使われていました。

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「グルート」に使われていたヤチヤナギ

一方、ハンザ同盟の貿易中継都市として栄えたハンブルグでは、ビールの輸出が盛んに行われ、交易拡大によるビールの大量生産、長距離輸送に伴い、その耐久性が不可欠となっていました。そうした中で、ホップの優れた抗菌作用・腐敗防止作用が明らかとなり、ホップがハンブルグのビールづくりに必要不可欠なものとなったのです。

image その後、その爽やかな苦味と香り、ビールの濁りをなくす清澄作用があること、泡もちを良くする作用があることなどがわかり、大人気に。

グルートを使ったビールは衰退していき、ホップを使用したビールが各地に広がっていくこととなりました。

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「グルート」に使われていたコリアンダー

そして1516年、ドイツでバイエルン公ウィルヘルム4世が、ビールの品質保持を目的としてビールは、大麦、ホップ、水のみを原料とすべしというビール純粋令を発令し、ホップはビールの製造において確固たる地位を獲得したのでした。

ホップの種類と代表的な品種

それでは、次に代表的なホップの品種についてお話ししましょう。ホップについては、日本においてはその特徴により「アロマホップ」、「ファインアロマホップ」、「ビターホップ」の大きく3種類に分けられています。

(1)アロマホップ

苦味付けというよりは華やかな香りをつけるために使用されるホップで、代表的なものとしては、ドイツのハラタウトラディション、アメリカのシトラ、カスケードといった品種が人気です。特にシトラ、カスケードといった品種は、オレンジやシトラス、グレープフルーツのような柑橘系の風味をつける効果があり、人気があります。頭文字が「C」であることから、「C系ホップ」とも呼ばれます

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C系ホップに特徴的な柑橘の香り

その他ではニュージーランドのネルソンソーヴィンは白ワインのような風味を、モトゥエカはレモンやライムのような風味を持つホップとして人気があります。

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ネルソンソーヴィンに特徴的な白ワインのような香り

(2)ファインアロマホップ

アロマホップよりも香りは控えめで、上品な苦味が特徴のホップです。世界的なホップの名産地、ドイツのテトナング、チェコのザーツなどの品種がこれにあたります。

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ザーツ

特にザーツはチェコの代表的な品種で、ピルスナーに多用されています。日本ではプレミアムモルツなどにも使用されており、苦味、香り共に穏やかで上品なのが特徴です。ちなみに、日本のホップの輸入量はドイツが1位、チェコが2位となっています。

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ピルスナー

(3)ビターホップ

アロマホップ、ファインアロマホップが香りを重視している一方で、こちらは苦味にウエイトを置いたタイプです。ドイツのマグナムやヘラクレス、アメリカのナゲットやコロンバスなどがこれにあたります。

ホップの使われ方

代表的なホップの品種をご紹介しましたが、ビールづくりにおいては、これらのホップのうちいずれか一つのみを使用することは稀で、いくつかのホップを組み合わせて作ることが一般的です。これらの組み合わせとホップの投入のタイミングにより作り手それぞれの個性が出るといえます。 では、次に、ホップを使用するタイミングについてお話ししましょう。 通常、ホップは麦汁(粉砕された麦芽を温水で煮て濾したもの)を煮沸する際に投入し、その麦汁に苦味や香り付けを行います。この投入方法をケトルホッピングといいます。これはホップに含まれている「アルファ酸」が熱により「イソアルファ酸」に変化することにより苦味を持つようになる効果を利用したものです。

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参照元:Sierra Nevada Brewing
参考サイト:ケトルホッピングについて

その過程に加えて、近年においてはドライホッピングという手法が使われており、人気を博しています。

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参照元:Sierra Nevada Brewing
参考サイト:ドライホッピングについて

「ドライホッピング」とは、発酵が終了して熱の影響を受けなくなった状態でホップを投入する技法のことで、熱を加えなければ苦味が付与されないことを利用した、IPA等の香りづけによく使われる技法です。ビールのラベルにある「DDH」という表記は「ダブルドライホッピング」の略で2回ドライホッピングを行うこと、「TDH」とは「トリプルドライホッピング」の略で3回ドライホッピングを行うことを意味しています。なお、最近「QDH」、つまり4回のドライホッピングを行ったものまで登場しています!

様々なホップ加工品!覚えておくとツウっぽい?

冒頭で、収穫したホップは主に乾燥・圧縮して運搬されて利用される旨書きましたが、ホップを加工したものも多く使われていますのでここでご紹介します。 その中で代表的なものがペレットと呼ばれるものです。

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ペレット

ペレットはホップを粉砕したものを圧縮してタブレット状にしたもので、圧縮することによって容積が小さくなるので輸送や保管コストの軽減につながること、乾燥ホップと違い、麦汁を吸収しにくく、ビールとしてのロスが減るといったメリットがあります。

次にクライオホップと呼ばれるもの。こちらはホップのルプリンの部分だけを抽出してタブレット状にしたものです。ルプリンだけを濃縮したものですので、少量で多くの香気成分を含むため、ペレットよりも効率的です。

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参照元:Yakima Chief Hops Inc.
参考サイト:クライオホップについて

また、ドロドロのエキス状にした「インコグニート」と呼ばれるものもあります。

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参照元:John I. Haas, Inc.
参考サイト:インコグニートについて

テルペン」と呼ばれるホップの香りの元となる成分のみを抽出し、液体化したものや、「キーフ」と呼ばれるルプリンのみを抽出して乾燥し、粉末化したものなども出てきています。

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参照元:Oast House Oils
参考サイト:テルペンについて

これらは麦汁に加えるだけでよいのが特徴。体積が小さく、より運搬・保管コストを削減できますし、ビールのロスもなく、使いやすく作業効率が高いのがメリットです。 これらの加工品は使いやすさや効率性、輸送や保管コストの削減、ロスの防止という観点からはメリットがあるといえますが、加工品であるがゆえに、コスト的には割高になってしまうというデメリットがあります。 また、これとは逆に乾燥も加工もしていない、生の状態のホップをそのまま使用してドライホッピングすることもあります。

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生ホップ

フレッシュな状態のため香りがよいのが特徴。使用できる時期が収穫時期に限られていたり、麦汁を吸収してロスが出るというデメリットはありますが、「季節限定商品」として販売しているブリュワリーもあります。

終わりに

今回は、ビールの原材料であるホップについて少し掘り下げてみましたが、ホップの歴史、品種、使われ方等について少しでも理解を深めていただけたら幸いです。 今後ビールを購入する際は、どんなホップがどのように使われているか、どんな風味を持つものなのかを想像しながら選んでみてはいかがでしょうか。

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ホッピンIPA

しっかりとした苦みと柑橘の際立つ香りIPA

HOPPIN' GARAGEからIPAがついに登場!! アメリカ産ホップと日本産ホップ(※)が出会った、柑橘の香り際立つHOPPIN’ GARAGE流の王道IPA。 香気成分を凝縮した鮮烈なシトラスの香りをもつ「シトラクライオホップ(※)」と、甘さと爽やかさを併せ持つフルーティーな香りの「カシミアホップ(※)」。ここに令和に新しく誕生した日本産ホップ、柑橘のフレッシュな香りが特徴の「フラノクイーン(※)」を加えました。HOPPIN' GARAGEとして最大のホップ量を使いながら、絶妙なバランスを追求した、しっかりとしたホップの香りと苦みが特徴のIPAです。 ※それぞれ一部使用

執筆者

ペンネーム:Odyssey

<自己紹介>

自己紹介:ビール党・家飲み派所属のサラリーマン。全国に出張するたびにその土地のクラフトビールを買い込んで帰り、飲んだあとはビールのラベルをはがしてコレクションしている。行けない土地のビールはふるさと納税で補完。最近はビアバーやブルワリー、イベント等にも出没し始めている。 - びあけん1級合格回数:1回 - 居住エリア:神奈川県 - 好きなビール:VERTERE さんのビール。ネーミングやラベルのセンスも含めて大好きです。 - 好きなビアスタイル:ヘイジーIPA - 最近注目しているブルワリー:しまなみブルワリー。松岡風人さんの渾身のラガーとこれからに注目しています - 最近飲んで美味しかったビール:MONKISHのWATER BALLOON FIGHT CLUB - SNSアカウント情報: https://x.com/Odyssey_2022?s=20

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