クラフトビール入門講座
缶ビールが破損する原因は?輸送中や保管時の注意点について

缶ビールが破損する原因は?輸送中や保管時の注意点について

缶ビールはびんビールよりも持ち運びやすく、屋外でも気軽に楽しめるのが大きなメリット。 比較的気を遣わずに済むため、一度にたくさん購入して運ぶ方も多いと思います。 しかし、缶ビールも扱い方を誤ると思わぬトラブルが発生するため、注意が必要です。

image

傷つかないように大切に製造したビールだからこそ、最後まで無駄にせず楽しんでほしい…! サッポロビール工場パッケージング部の筆者が、缶ビールの取り扱いについて解説します。

「通常の取り扱い」であればOK

大手メーカーのQ&Aの多くには、『缶製品は通常のお取り扱いに耐える強度を持っています』と記載されています。 ここでの「通常の取り扱い」とは、「物理的・化学的ダメージが加わらない、あるいは極端な温度環境に置かれない取り扱い方」と捉えて頂いて十分でしょう。

image

製造ラインにおいても、毎分1500本のスピードで運ばれる缶にはそれなりの外部圧力が加わりますが、通常傷やへこみが発生することはありません。 万が一、品質確認で傷やへこみが見つかった場合は「異常」のサイン。 その場合は設備点検と製品の再検査が徹底され、傷ついた缶が出荷されることはありません。

したがって、いくつかの注意点を守れば、ビールはやはり美味しく楽しいもの。 楽しみだったはずのビールで残念な思いをしないために、本記事で「”通常ではない”取り扱い」を心得ていきましょう!

缶ビールは意外と衝撃に弱い

缶ビールは手で軽く持ったくらいではへこまないため、一見頑丈な金属容器に感じられますが、これは炭酸ガスによる「内圧」がかかっているから。

缶の肉厚は最も薄い部分でなんと0.1 mmほどであり、コピー用紙1枚とほぼ同じ薄さです。 省資源の観点から技術が発達した結果、現在のビール缶はこの薄さでも内圧に耐える強度を備えています。

image

しかし、突起物や落下などにより強い衝撃が加わると、小さな穴(ピンホール)や亀裂が生じるほか、状況によっては破裂してしまう場合があります。 缶を落としたら穴が開いて中味が噴き出しました。こんなに簡単に穴が開くものですか?
|サッポロビール よくあるご質問

また、時間が経つとビールの糖分が固まってピンホールが塞がり、漏れが止まることがしばしばあります。 『漏れていないのに、中味が半分くらいしかない』という場合は、このようなケースが可能性として考えられるでしょう。

缶の注ぎ口(スコア)が外部衝撃により若干開いてしまい、中味が漏れ出てしまう危険性もあります。 購入後に持ち運ぶ際は、落としたり突起物に触れたりすることのないよう、十分注意しましょう!

image

落としていないのに漏れてきた?金属腐食に注意

保管の仕方にも、意外と知られていない注意点があります。

それは、保管する場所を綺麗に保つこと。 ビール缶はアルミでできているため、アルカリ性の成分や塩分(塩・醤油・梅干し・味噌など)に触れると「金属腐食」が起こり、穴が開いてしまうことがあります。 腐食の度合いや速さは、場所の材質や湿度など様々な条件によって異なります。

image

腐食性の物質が冷蔵庫の中に少しだけこぼれていても気が付かず、缶底に穴を開けてしてしまう…というケースは、珍しいことではありません。 静置していたのに漏れてきた!という場合は、別の食材にうっかり触れていないか確認してみましょう。

冷凍庫での保管はNG!

ビールを早く冷やしたいとき、冷凍庫に入れる方もいると思います。 しかし結論から言うと、ビールを極端な低温環境に置くのはNG。

ビールテイスト飲料の凝固点は、アルコール5%であれば-2℃付近、ノンアルコールビールであれば0℃付近です。一般的な家庭用冷凍庫は-18℃付近ですので、ビールは簡単に凍結してしまいます。 凍結すると内部圧力が著しく上昇し、缶が大きく変形・破裂する要因となるので絶対に避けてください。

破裂に加え、美味しく飲めなくなる危険性もあります。 泡立ちや風味が損なわれてしまうほか、麦芽や水由来の成分が析出して「凍結混濁」という濁りを引き起こす場合もあります。

image

『早く飲みたいから急冷したのに、結果飲めなくなってしまった…しかも掃除が大変…』 なんて、とても悲しいですよね。 冷やすのを忘れてしまっても決して焦らず、冷蔵庫や冷水で冷やしましょう。(※) じっくり待ってから飲むビールは、きっと格別なはず! ※冷蔵庫でも、チルド室や吹き出し口の近くは0℃以下になってしまうこともあるので注意

最後に

「”通常ではない”取り扱い」についてご理解頂けたでしょうか? ビールは中味・外装ともにデリケートな…ある意味面倒な飲み物とも言えますが、 きっとそれだけの価値があるものだと筆者は信じています。 本記事が、ビールを美味しく飲み続けるための一助になれたのであれば、嬉しく思います!

商品画像

サッポロビール株式会社

飯村 瑞季(Iimura Mizuki))

<略歴>

2022年東京農工大学大学院農学府応用生命化学専攻修士課程修了。
同年サッポロビール株式会社入社。
入社後は千葉工場パッケージング部に所属し、充填・包装工程の管理や技術開発に取り組む。
学生時代、「注ぎ分け」の魅力を提供するビアスタンドで勤務した経験から ビールが持つパワーや奥深さを自らの言葉で発信したいと考え、記事執筆の社内副業に従事中。

このサイトはアルコール関連のページであり
20歳以上の方を対象としています。
あなたは20歳以上ですか?

いいえ