クラフトビール入門講座 ビール工場の設備はどんなものがある?工場見学では見られない部分をご紹介!

2024.12.06
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ビール好きの皆さんの中には、工場見学に行かれたことがある方も多いのではないでしょうか? 「このタンクには350ml缶~本分のビールが入ります!」に驚いたり、目まぐるしく動くパッケージングラインを上からチラ見したり、最後には出来立てほやほやのビールが飲めたり、何とも楽しいひとときですよね。
しかし、工場見学に行きつくして、そろそろ新鮮味に欠けてきた方もいらっしゃるのでは…。 ということで今回はちょっと玄人向けに、『見学では教えてくれないサッポロビール工場の設備』について解説します!
伝統技術を支える設備たち「醸造」
醸造設備は1つ1つが大きな設備ですが細やかに管理されており、少しでも怠ればビールの香味品質に直結してしまいます。原料や醸造に使う設備に着目されがちですが、それらを下支えしているたくさんの設備があるのです。
仕込室
仕込室の「上の部分」はビール工場のイメージ写真として最もよく見る景色ではないでしょうか。 しかし、実は見えている部分は床面ではなく、更に「下の部分」が広がっています。
左:よく見る上の部分 右:下の部分
洗浄
各タンクには様々な品種が次々と入ってきますが、前後品種の香りや成分が混ざらないよう、都度念入りに洗浄されます。
麦芽・酵母・珪藻土など、固形物を多く扱う醸造設備において重要なのは、「スプレーボール」。 すすぐだけでは壁面の成分を落としきれないため、このスプレーボールを使って満遍なくシャワーリングします。 品質に直接影響を及ぼすタンクでは、回転式のスプレーボールを採用しており、 正しく回転しないと異常を知らせるシステムまで備わっています。
まるでミラーボール!
バルブ
醸造設備内では、異なる品種が配管内で混じり合わないように細かく制御されています。 正しい経路へビールを導くために必要なのはバルブ。 ちなみにバルブの自動制御を使用せず、人手でホースを付け替えることで品種を切り替えているブルワリーも多くあります。
1本1本を丁寧に保証「パッケージング」
1日に何十・何百万本ものビールが駆け抜けるパッケージングラインですが、お客様がコンビニでふと手に取るのはたった1本のビール。全てのお客様がビールを安心して飲めるよう、設備の維持管理や点検は欠かせません。
コンベア
設備から設備へビールを運ぶ役割を持つ、言わば工場の「血管」です。 大型の設備をどんなに念入りにメンテナンスしても、コンベア設備が故障すれば確実に生産は途絶えてしまいます。 管理を怠ると缶やびんが転んで傷ついてしまうこともあるため、日々の点検が非常に重要です。
ヱビスビールを搬送している様子
充填室
パッケージング工程の要である充填。 今まで配管で守られていたビールが外の世界に飛び出す…そんな記念すべき瞬間は、異物や微生物が混入するリスクをはらんでいます。したがって、充填室はビール工場内で最も衛生管理が厳しい場所になっています。
検査機
以前は抜き取り検査や人海戦術での検査が主流でしたが、今やほとんどが機械化し、無人で全ての製品をもれなく保証することができるようになりました。しかし、この検査機の精度を担保するには、やはり人による管理・メンテナンスが重要です。
生産活動の生命線「ユーティリティ」
ユーティリティという言葉は、業界や場面によって様々な意味を持っていますが、ここでのユーティリティは電気・水などの、いわゆる「ライフライン」を指す言葉です。 工場には大規模なユーティリティ設備があり、ビールの生産に使用する電気・水・湯・蒸気・炭酸ガス・エアー・ブライン(不凍液)等を供給します。
供給設備
ユーティリティが不足するとビール製造・洗浄殺菌・メンテナンスなど、全ての活動が停止してしまうため、最重要設備と言っても過言ではありません。 また、水はもちろん炭酸ガスなども直接ビールの中味に使用されるため、品質が非常に重要となります。 効率的にエネルギーを利用するためにも、高品質・安定供給が強く求められています。
廃水処理設備
ビールの原料として水が使われますが、工場では洗浄でさらに大量の水を使用します。 それらの廃水は、工場内でしっかり処理してから工場外に持ち出すことが重要です。 外部の設備を介さず、自社工場で処理した水を直接河川に放流しているサッポロビール静岡工場では、特に廃水処理技術や水資源利用の削減に力を入れています。
静岡工場(静岡県焼津市)が持つ大規模な廃水処理施設
最後に
かなりニッチな部分を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 今回は紹介しきれませんでしたが、他にもこんな設備があります。
・酵母を培養・保存するタンク ・分析や微生物検査に必要な機器 ・原料を計量・粉砕する機械 ・部品をメンテナンスする工作機械 ・各設備を監視するためのシステム・モニター
見学では一部しか見えませんが、ビール工場では想像もできないほどたくさんの設備がせっせと働いています。 そして、ビールの美味しさを届けるだけでなく、持続可能な生産活動への取組みも工場の役割の1つ。 ビール工場はこれからも、生まれ変わり続けます!

サッポロビール株式会社
飯村 瑞季(Iimura Mizuki))
<略歴>
2022年東京農工大学大学院農学府応用生命化学専攻修士課程修了。
同年サッポロビール株式会社入社。
入社後は千葉工場パッケージング部に所属し、充填・包装工程の管理や技術開発に取り組む。
学生時代、「注ぎ分け」の魅力を提供するビアスタンドで勤務した経験から
ビールが持つパワーや奥深さを自らの言葉で発信したいと考え、記事執筆の社内副業に従事中。
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