クラフトビール入門講座
ビールの色は何で決まるの?それぞれの味や特徴をわかり易く解説!

ビールの色は何で決まるの?それぞれの味や特徴をわかり易く解説!

ビールといえば淡い黄色の液体に白い泡の、とイメージする方が多いと思いますが、海外のビールやクラフトビールを見てみると、その色は黒いものから褐色、赤っぽいものや白っぽいものまで様々です。ビールの色は何によって決まるのか、私の大学時代のビール試験醸造での経験も交えて解説します。

ビールの色はモルト(麦芽)の色

結論から言ってしまうとビールの色は主に原料であるモルト(麦芽)の色に由来します。モルトとは麦を発芽させ乾燥したもので、日本ではお馴染みの淡い黄色のビールには大麦由来のペールモルト(淡色麦芽)が多く使用されています。ビールの仕込工程において、初めにモルトを粉砕してお湯に混ぜ、お粥状の液体(マイシェと呼ばれます)にして加熱するのですが、その時にモルトから抽出される成分がビールの色を決めるのです。

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ロースト(焙煎)したモルトを使用すると褐色や黒い色のビールに

褐色や黒い色のビールはどのようにしてつくられているのかというと、複数種のモルトをブレンドして使用することでビールに色を付けています。ペールモルトの他にカラメルモルトやブラックモルトと呼ばれる褐色や黒い色のモルトを原料の一部にブレンドすることでビールの色を調整します。麦を発芽させ乾燥する際、ペールモルトは焦がさないように温風で乾燥するのですが、乾燥後にロースト(焙煎)することによって褐色や黒い色の付いたモルトができあがります。濃い色ビールの色はモルトの焦げた色なのです。ローストする温度や時間に応じて色付き具合が変化するので、ブルワー(醸造家)は複数種のモルトをどれくらい使用すれば目指すビールの色(もちろん味や香りもですが)になるのかを見極めてビールの仕込みを行っています。 image

ローストしたモルトをどれだけ使用するかが重要

ローストしたモルトのみを使用すれば濃い色のビールが出来上がるか、というとそういう訳にはいきません。ローストしたモルトの使用する割合を高くし過ぎてしまうと、ビールの仕込工程の進行に影響が出てしまいます。モルトには麦のデンプンを糖に分解する酵素(アミラーゼなど)が含まれます。モルトを粉砕し、お粥状のマイシェにして加熱する「糖化」の工程において、酵素がデンプンをブドウ糖などの糖に分解します。この糖が後の発酵工程で酵母の栄養となり、アルコールと炭酸ガスを発生させビールができあがるのです。ローストされたモルトではその酵素が熱で働きを失って(失活して)しまい、酵母の栄養となる糖の生成が困難になってしまいます。実際に大学での試験醸造の経験なのですが、ローストしたモルトだけを使用した場合、一切糖化が進まず糖が生成しなかったことで、酵母が発酵できずに失敗してしまったことがありました。ローストしていない、酵素の力を維持したモルト(ペールモルトなど)を主に使用し、そこに色付け、風味付けのためのローストしたモルトをブレンドすることで、糖化を効率的に進行させ、酵母が元気よく発酵するための環境をつくることができるのです。このようにビールに目指した色を付けつつ、しっかりと酵母が発酵してアルコールと炭酸ガスを生成するためには、複数のモルトをどのくらいのバランスで使用するかが重要なポイントとなります。

「黒ビール」と一括りにはできない濃い色のビール

前述のとおり複数種のモルトをブレンドする度合いによってビールの色が変わるのですから、ビールの種類(スタイルと呼ばれます)によって当然その色にグラデーションが存在します。よく見かける淡い黄色のビールと比べて少し濃い色のビールだからといってすべて「黒ビール」と呼んでしまうのはちょっと乱暴かもしれません。具体的に濃い色のビールには多くのスタイルがあります。黒いビールとしては、ロンドン発祥の【ポーター】や、ポーターがアイルランドで進化して生まれた【スタウト】、さらには南ドイツ発祥の【シュバルツ】などが挙げられます。また、褐色や銅色のビールとしては【ブラウンエール】や、ドイツ語で「暗い」を意味する【デュンケル】、さらにドイツ北部発祥の【ボック】や、【ダークラガー】など様々なスタイルがあります。クラフトビールを提供するお店のメニューや、あるいはビールの名前そのものに、ビールのスタイルが表記されていることも多いです。ビールのスタイルとその特徴を知っておけば、そのビールがどんな色なのかある程度想像できるので、海外のビールやクラフトビールを選ぶ際に役立つかもしれません。 image

濃い色のビールの味や香りは?

褐色や銅色などの色の濃いビールは適度にローストしたモルトを一部使用しているので、その香りはパンを焼いたトーストのようなもの、砂糖を焦がしたカラメルのようなものもあります。モルト由来の香りを引き立たせ、麦の甘味やコクを感じられるモルティなものが特徴的です。合わせる料理としてはデミグラスソースのハンバーグや、ソースたっぷりのお好み焼きなど、味の濃いものとの相性も良いはずです。また、ロースト度合いが高く、黒い色をしたモルトを使用したビールにはカカオのような香りもの、焦げ感が強いスモーキーな香りものもあります。焦げっぽい香りとしっかりとしたモルトのコクを感じられるので、スモークナッツはもちろん、チョコレートやアイスクリームなどの甘いスイーツとともに飲んでみても面白いと思います。

小麦やオート麦が使われているビールは白っぽい色に

濃い色のビールがある一方で、白っぽい色のビールもあります。ビール業界において色を表現する際、いわゆる白っぽい(白い)色と呼ばれるビールは、牛乳のような白い液体ではなく、かすみがかった淡い黄色を白っぽい(白い)色と表現します。この白っぽい色は原料に使用している小麦やオート麦に由来するもので、大麦に比べて小麦やオート麦はタンパク質が多いためビールが白く濁ってくすんだ色に見えます。代表的なビールのスタイルには、小麦の他に副原料としてコリアンダーシードやオレンジピールを使用したベルギー発祥の【ベルジャンホワイト】や、小麦由来のモルトを50%以上使用してつくるドイツ発祥の【ヴァイツェン】、オート麦を使用することにより濁った色が特徴の【ヘイジーIPA】、その他にも【ウィートエール】や【ベルリナーヴァイセ】などがあります。もう一つ、白っぽく濁った色になる理由には酵母の存在もあります。発酵後、瓶や缶、樽に充填する前に酵母を除くためろ過をする場合がありますが、ろ過をしない「無ろ過」のビールには酵母が含まれており濁って白っぽい色になります。このようにビールの白っぽい色は主に原料の小麦やオート麦、および酵母に由来するものなのです。 image

白っぽいビールの味や香りは?

小麦由来のモルト、あるいは小麦を使用したビールは苦味が控えめでフルーティーな香りのものが多くみられます。ビールの苦味が苦手という方でも「これなら飲める」と感じるスタイルが多いのではないでしょうか。【ベルジャンホワイト】はコリアンダーシードとオレンジピール由来の爽やかな香りとほのかな酸味が特徴的で、エキゾチックな風味のエスニック料理ともマッチします。【ヴァイツェン】はバナナやクローブのようなフルーティーな香りが感じられ、同じドイツの料理であるヴァイスブルストにザワークラウト添えて飲めば間違いなしです。

色の濃淡を表す指標がEBCやSRM

クラフトビールを数多く提供しているお店の中には、メニュー表にビールのスタイルやアルコール度数(ABV)の他に、苦味の指標(IBU)などの細かい情報を記載してくれていることがあります。ビールの色についてもカラーイラストなどでパッと見てわかりやすく表示している場合もありますが、色の指標を表す数値として記載されていることもあります。その指標がEBC(European Brewery Convention)やSRM(Standard Reference Method)というもので、低い値ほど淡い黄色、高い値ほど濃い黒色を示します。ビールごとのEBCやSRMの値を比べてみて、それぞれどんな色のビールか想像するのが面白いところです。

多様性があるのがビールの魅力

ここではビールの色が決まる理由を解説してきましたが、副原料としてフルーツや着色料を使用すればピンク色や水色のビールにもなります。色も風味も多様性があるのがビールの魅力の一つです。味や香りを楽しむのはもちろんですが、その色も見て楽しんで、ビールを最大限に堪能してもらいたいです。今まで缶や瓶から直接ビールを飲んでいた方は、ぜひ一度グラスに注いでその色を見ながら飲んでみてはいかがでしょうか。これから先、クラフトビールがさらに多くの方に飲まれるものとなって、「ビールの色ってどんな色?」という質問に対して「それはスタイルによって様々だから…」と答えてくれる方が増えてくれれば嬉しいです。

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  • ペンネーム:遠藤 諭
  • 自己紹介:大学での試験醸造の経験からビールの世界にハマり、美味しいビールを探求中。ビールを通した出会いとつながりを大切にして、多くの方にビールの奥深さを伝えたい!北海道札幌市出身。
  • びあけん1級合格回数:2回
  • 居住エリア:神奈川県
  • 好きなビール:志賀高原ビールMiyama Blonde(玉村本店)
  • 好きなビアスタイル:セゾン・ファームハウスエール
  • 最近注目しているブルワリー: Streetlight Brewing(合同会社札幌醸々)
  • 最近飲んで美味しかったビール:green sky blue grass(Streetlight Brewing) 2023年6月、北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOにて初開催された「CRAFT BEER FIELD IN F VILLAGE 2023」で提供されたファームハウスエール。ネルソンソーヴィンホップの香りとベルジャンイースト由来の香りが見事に調和する最高の一杯でした。

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