今回新たに商品化されるビールのもととなった人生ストーリーの主人公は、色彩学講師のTAMAEさんです。会社員として働きながら、色彩にまつわる研究に取り組んでいます。
そんなTAMAEさんの人生ストーリーをもとに生み出されたビール、それが「Dandelion」(ダンデライオン)です!
(※本商品は酒税法上の区分ではビールに該当しません。発泡酒の商品となります)
ダンデライオンは日本語で「たんぽぽ」を意味します。え、たんぽぽのビール…? 一体どんな味? ということで、編集部は早速ひと口いただいてみました。
この人生ストーリーの主人公
たんぽぽのビールってどんな味? 少女時代に読んだ小説をヒントに「夏をとじこめたお酒」が完成!
TAMAEさん
原料には「ダンデライオン」の文字。興味をそそります
ゴクッと飲み込むと爽やかな香りが鼻に抜け、間髪をいれずにじわりとくる苦みが口の中に広がります。個性的な苦味は、不思議と口の中に閉じ込めてじっくり味わいたくなる。感動するのはビールの色で、お店の照明を受けてキラキラと黄色く輝いています。
この色、苦みに秘められた意味とは? なぜたんぽぽをモチーフにしたビールを企画したのか? TAMAEさんにお話を伺いました。
着想を得たのは、子ども時代に愛した1冊の本
友達にホッピンガレージの企画参加者がいたのをきっかけに、「ストーリーブリューイング」の存在を知ったTAMAEさん。その友達のビール試作品発表会で「誰でも応募できる企画」だと知り、脳裏に1冊のSF小説が浮かんだといいます。
「発表会の帰り道でした。『“あの小説”の中に出てくるお酒をビールで表現したい!』と思い立ち、電車の中でコンセプトを考えて即エントリー。ほろ酔いだったせいか、深く練りもせず、勢いで応募しました」(TAMAEさん、以下同)
数ヶ月後「あなたのビールをつくります!」と連絡が入ったときは、まさか自分が選ばれるとは思っていなかったのでびっくりしたそうです。
TAMAEさんがヒントにしたSF小説にはアメリカ人の少年が登場します。少年は、生まれ育った小さな田舎町で12歳の夏を迎えることになりますが、本の中では世の中の不条理さや死への絶望が描かれるシーンも。TAMAEさんはこの本にどんな思い入れがあったのでしょう。
「本の中に『たんぽぽのお酒』が出てくるんです。初めて読んだ当時は子どもだったので、お酒は未知の飲み物。どんな味なんだろう? と印象に残っていました。
それから当時は理解できなかったけれど、今読み返すと人生の辛さや負の部分が、ファンタジーの中に織り込まれていたんだなあと思って。たんぽぽのお酒が出てくる印象的な小説と、ホッピンガレージの企画が重なって、着想を得ました」
Dandelionはそんな本の内容に合わせ「大人になる途中のほろ苦さを秘めながらも、輝くひと夏をイメージした黄色いビール」を目指したといいます。
「あの夏を閉じ込めた」ニュアンス表現に四苦八苦
本の中で、たんぽぽのお酒はこんなふうにつくられています。
子どもたちはたんぽぽを何百個も摘み取り、ブドウ絞り器に入れて、おじいちゃんと一緒にギュッと手で回す。絞り出した黄色い液体に雨水を入れる。そしてお酒ができあがる。
物語では「雨水」に独特の意味合いを持たせています。世界中を旅した空から落ちてくる雨の水を入れることで、いろいろな思い出をひとつにする。物語に出てくるたんぽぽのお酒は、思い出を凝縮した「飲むと、夏の味がする」飲み物となっているそうです。
Dandelionに合わせたTAMAEさんのコーディネート。鮮やかな黄色のお洋服、たんぽぽのピアスが素敵です
「夏の味」の表現には、当時そこに住んでいた人たちの思い出を詰める必要があります。
「登場人物の思い出を詰めたお酒だったため、商品化に向けてそのニュアンスをどう表現するかが難しかった」
TAMAEさんが思い描くビールをつくるため、ブリュワーは現実的なアイデアをいくつも検討します。「輝くような黄色」「しっかりとした苦味」を実現するにはどうしたらいいか試行錯誤を重ね、原料にはたんぽぽコーヒーやハーブで使われているたんぽぽの根を使うことになりました。
花の香りを表現するために、エルダーフラワーとベニバナを使用したところ、ベニバナがうまくビールの色にも作用して、なんと赤みの少ないクリアな黄色を表現することに成功! まさに初夏の日差しを浴びて輝くたんぽぽのようなビールに仕上がりました。
「黄色」はハッピーな意味合いだけじゃない!? 色彩学講師でもあるTAMAEさんに聞いてみた
TAMAEさんはDandelionの「輝くような黄色」に強い思い入れがあります。
この日、たんぽぽカラーのファッションで取材に応じてくれたTAMAEさん。さぞや黄色がお好きなのだろう……と思っていたら「以前はずっと赤が好きでした」と意外な返事。その理由は家庭環境にありました。
「私は3人きょうだいの長女。母は、私のものは赤、妹は黄、弟は青と持ち物を色分けしていました。黄色は妹の色だから、私が身に着けるのはいまだに少し違和感があるんですよね」
「人が持つ色への印象は過去の体験が影響し、そこが色彩の深いところだ」とTAMAEさんは話します。黄色は一般的に幸せや楽しさを象徴することが多いようですが、幸せの体験だけでなく「別の意味合い」で使われることもあります。
「禁断の恋を描いた映画『マディソン郡の橋』のお話です。登場人物の部屋は黄色が特徴的で。彼女がお風呂でビールを飲むシーンがあるんですが、彼女はビールを日常的に飲む人じゃない。パートナーと別れて落ち込んでいるけれど、恋をして幸せだった4日間を、ビールが象徴しているようなシーンでした。
こんなふうに、黄色は落ち込んでいるけれど希望がある、という場面で使われることがあるんですよね。ハッピーなときだけではないんです。ビールの苦さと黄色がとてもマッチした印象的な映画でした。
『疲れたけど、このビールを飲んでがんばろう』『仕事でしくじったとき、ビールを飲んで切り替える』、こういった経験がある方も多いのではないでしょうか。「黄色」を分析することで、ビールの持つ力を再認識しました」
過去にタイムスリップした気分で飲んでほしい
「ストーリー性のあることが、私は好きなんです」
何かを自分の中に取り入れ、アウトプットする作業が好きだと話すTAMAEさんにはきっと、自身のフィルターをかけて外に出すことで表現したい思いがあるのでしょう。その思いを体現したDandelion。
「Dandelionは12歳の少年の夏を題材にしてできたビールなので、みなさんが心に保存している思い出にタイムスリップする気持ちで味わってほしいです。飲んだ方がどんなシーンで、味をどのように感じたのか、これからいろいろな声を聞くのが楽しみです!」
過去に思いを馳せて飲むDandelionは、みなさんの思い出によって異なる味わいになるのかもしれません。
これから始まる2021年の夏。みなさん自身の人生ストーリーをつまみに、Dandelionを手に取ってみてはいかがでしょうか。
場所提供:森の図書室
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2018年10月に始まった『HOPPIN’ GARAGE』。
HOPPIN'
GARAGE(ホッピンガレージ)は、「できたらいいな。を、つくろう」を合言葉に、人生ストーリーをもとにしたビールづくりをはじめ、絵本やゲームやラジオなど、これまでの発想に捉われない「新しいビールの楽しみ方」を続々とお届けします。