贈りものを飾る脇役だったリボンを主役に作品制作しているアートユニット「RIBBONESIA」。その作品の独創性はリボンの新たな可能性を切り拓き、様々なブランドとのコラボレーションが話題となっている。そのRIBBONESIAの感受性を“味わい”として楽しめるビール「RIBBONESIA」が誕生した。
(写真左)アーティスト 前田 麦(まえだ ばく)さんと
(写真右)クリエイティブ・ディレクター 吉川 徹(よしかわ とおる)さん。
この人生ストーリーの主人公

小リボンの可能性を追求し、世界中に驚きと感動を与え続けるアートユニットRIBBONESIA(リボネシア)
RIBBONESIAさん

海外から注目され始めた RIBBONESIAのリボンアート
——RIBBONESIAさんは海外からのオファーも絶えませんが、お二人がアートユニットを組んだきっかけを教えてください。
前田さん 出会ったきっかけは、2008年に札幌で開かれたクリエイティブワークショップですね。
吉川さん 僕はそのワークショップに通訳・コーディネーターとして参加していて、麦さんは札幌ですでにイラストレーターとして活躍していた。
——そこでリボンアートの話が生まれた?
吉川さん いや、そのあとしばらくたって、麦さんからリボンで作品づくりをしていると聞いて見せてもらったら素晴らしくて。そこから1年かけて構想を練ったり、作品づくりをしたり。いわゆる準備期間ですね。
——そして2010年に「RIBBONESIA」の公式サイトを発表。すべて英語で、あえて日本人だということは控えた。
吉川さん ええ。どうしても日本は東京が中心で、地方のアートはなかなか注目されにくい。ならば、いっそのこと海外へ発信して、無国籍ブランドという形で日本の皆さんに知ってもらうほうがいいのではないかと思いました。
——海外の反応はいかがでしたか?
前田さん わりとすぐに反応があったよね?
吉川さん 立ち上げてすぐに、デザインポータルサイトが取り上げてくれて。そこから海外のブランドがオファーしてくれました。日本は実績が重要ですが、海外は新たな才能を発掘して採用することのほうに価値を置く傾向があるので、「新しいものをつくれば評価は自ずとついてくる」という僕らの考えが良い方向に転んだんだと思います。

作品づくりの原点にある 自然の美しさへの畏敬の念
——RIBBONESIAさんの作品は、美しさに引きつけられて、ずっと見ていたくなるような不思議な感覚があります。
吉川さん リボンアートというと、皆さん「かわいい」とかファンシーなものを想像しますよね。僕らが目指しているのは、自然の持つ「美しさ」や「存在感」というものです。自然の造形美は完璧で揺るぎない。そのエッセンスをリボンで表現できればと日々努力しています。オーダーメイドであっても同様で自然に逆らう手法は取りません。それは自然の摂理に逆らうことで「美しさ」から遠ざかってしまうからです。そこはクライアントにも理解してもらっています。
——クライアントから仕事のオファーがあったとき、お二人はどのように作品づくりを進めていくのでしょうか?
吉川さん 僕は元々グラフィックデザイナーですし、二人でコンセプトからデザインまで考えて、話し合いながら進めています。
前田さん うん、そう。お互いがアイデアを出す感じですね。そこで立体(作品)にできるかどうかも話し合う。
吉川さん 僕らは依頼されてつくるばかりではなく、常に新しい提案というか作品を発表していくようにしています。常に同じものだけではなく、進化は必要ですから。
前田さん 僕らはすべて理詰めというわけではなく、楽しみながら手を動かすことも大切にしています。当時、デジタルからアナログ回帰という流れが僕の中にあったかもしれない。僕もイラストはパソコンでも描くし、どちらかというとデジタルを使うことが多いけれど、リボンから立体をつくるフィジカルな面白さは、本当に飽きない。
吉川さん リボンは柔らかいので無理矢理にねじったり、曲げたりすればどんな形にもなるけれど、こだわっているのは自然なカーブ。リボンそのものの魅力が失われるようなことはしません。
——前田さんは生まれてから現在まで北海道の札幌で暮らしていますね。作品に動物や植物などの自然モチーフが多いですが、土地の影響はありますか。
前田さん 多分ある……のかな。小さい頃から恐竜や動物、虫、花とかが好きで、今でも自然のものが最強だと思っています。
吉川さん リボンの自然の美しさに重きを置くのは、昆虫や植物の仕組みには物理法則に則った美しさがあるからです。それは作品にとってとても重要な要素です。そこがいつまで見ていても飽きない美しさが生まれる理由ではないでしょうか。いろいろな人が見て、いろいろな見方があがるほど良い作品だと感じますね。

新作「RIBBONESIA」は 森の中にいるような気分になるビール
——ビールの出来はいかがですか。爽やかな気品あるネルソンソーヴィンホップにジンジャーの風味を加えて、RIBBONESIAさんのアートにも通じるような「自然の生命力を感じる」ビールに仕上がりましたね。
吉川さん (一口飲んで)後味にジンジャーが香りますね。北海道の森の中にいるようなイメージ。「森」っていうと、爽やかな緑の香りを思い浮かべる方が多いと思いますが、実際には木のウッディな香りとか、ちょっと湿った落ち葉の土臭さとか、いろいろな香りが混じっています。このビールも爽やかさの後にジンジャーの存在感があって、その複雑な味わいが美味しいですよね。
前田さん 僕はとても飲みやすいビールだと思いました。冬はクリスマスやお正月など、人が集まるようなハレの日も多いから、そういう席で飲むのにとても合う気がします。
吉川さん シチュエーションなら、札幌の自然がいっぱいあるような場所でバーベキューをするときに、こういう個性的なビールを飲むのもいいよね。
——最初、自分たちを主人公にしたビールをつくるという話を聞いて、どう思いましたか。
前田さん びっくりはしたけれど、ビールは好きだしいいかなと。それに札幌で育った僕にとって、サッポロビールさんは親近感があるし(笑)。今回は、僕たちというより「RIBBONESIA」のアートにホッピンガレージさんが共鳴してくれたのだと思っています。
吉川さん ホッピンガレージの人生ストーリーをテーマにしたビールというコンセプトには驚いたけど、ものをつくるという上ではあまり畑違いとは思いませんでしたね。主役である贈りものの飾りだったリボンを、僕らは再利用とは違う形で、新たな価値観を創り出した。みんなが見過ごしがちなものにスポットを当てて「主役にする」という意味では、ホッピンガレージさんの思いとも重なる部分がありますね。

パーティーにも映える異色の缶デザインが良い
——今回は、RIBBONESIAさんにオリジナルでアート作品を創っていただき、缶に使用させていただきました。
吉川さん 具体的なモチーフがあるわけではないですが、「自然」「北海道」「RIBBONESIAのイメージ」などを二人で話し合いながら、緑と金色のリボンを使ったボタニカルなイメージの作品にしてみました。
前田さん 今までのビール缶のデザインにはないものが出来上がったと思っています。パーティーやハレの日の食卓に映えそう。僕も友だちとかみんなで飲みたいですね。
吉川さん そうだね。僕は「王道」って好きじゃない。RIBBONESIAの作品も、小動物や植物など、日頃あまりフィーチャーされない存在に親近感が湧きます。それらをモチーフにすることで新しい発見が生まれるから。大人のパーティーというと、“シャンパン開けよう”ってなりそうだけれど、「こんなビールもいいでしょ」と提案したい。
前田さん 缶デザインがビールっぽくなくて、そこが逆にいいよね(笑)。
吉川さん そう、王道じゃない。そこが良い!(笑)。
プロフィール)RIBBONESIA
アーティストの前田 麦とクリエイティブ・ディレクターの吉川 徹によるクリエイティブ・ユニット。身近な装飾資材であるリボンを脇役ではなく主役として使い、その表現の可能性を追求してリボンを使った様々な造形作品を制作している。リボンアートのパイオニアとして国内外での展示はもとより、企業コラボレーションや空間演出、広告ビジュアルなどにも積極的に取り組み、その活動は多岐にわたる。
作品紹介 RIBBONESIA’s Artwork
「地図にも載っていない『RIBBONESIA』という国で、動物や自然にふれあいながらリボンで作品を創っている人がいる」。そんなストーリーから立ち上げたという「RIBBONESIA」。彼らの自然へのやさしい眼差しが伝わる作品を一部ご紹介します。




