ビールのオフフレーバーとは?代表的な物質と発生原因について解説!

ビールのオフフレーバーとは?代表的な物質と発生原因について解説!

(画像:YEBISU BREWERY TOKYO | 工場見学・ミュージアム | サッポロビール (sapporobeer.jp)より)

ビールは、1か月以上もの期間をかけて緻密に温度管理されながら製造される、複雑でデリケートな飲み物です。 製造工程でうっかり温度管理のミスが生じたり、出荷後の保管状態が適切でなかったりすると、ビールに含まれる成分由来で好ましくない香味が生じることがあります。このような香味を「オフフレーバー」と呼びます。 醸造家たちは、これらのオフフレーバーが発生する原理を熟知した上で、醸造条件をコントロールしているのです。

もし「黒ラベルは今日も美味しいなー」と思って頂いたなら、それはまさに奇跡であり、積み上げてきた技術の賜物! 本記事でビールのオフフレーバーについて解説し、ビールの繊細な魅力を発見して頂くきっかけになれば幸いです。

ビールの香味特徴について

ビールの香味を特徴づけるものは、麦芽・ホップ・酵母・副原料の4つがあります。 これらは複雑な醸造工程の中で、化学的に変化しながらビールの香味を形成していきます。 麦芽・酵母・副原料は農産物であるため、産地や収穫年によってその香りや品質にはどうしてもムラがあるもの。醸造家は、このムラを考慮しながら原料のブレンド比率などを設計する必要があります。


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製造段階においても、液体に溶け込んでいる酸素量充填時に混入する酸素量について、厳しい品質基準のもとで管理されています。

また、酵母はリアルタイムに生きている状態で使用するため、少しの温度変化でも酵母の活性に影響を及ぼし、香味が変化してしまいます。万が一、設備不良などで温度管理が通常通りいかなかった場合は、分析や官能検査のサンプルを増やすなどして、製品化の可否を厳しくジャッジします。

ビールのオフフレーバーとは

醸造工程や原料そのもの、出荷後の保管状態により発生する好ましくない香味を「オフフレーバー」と呼びます。オフフレーバーが発生しても健康に影響は及ぼしませんが、ビール本来の香味品質を大きく損なってしまいます。

ビアスタイルが異なっても、許容される程度に微妙な違いはあるものの、ケアすべきオフフレーバーの種類は共通しています。 一方で、ビールの枠を出て別の醸造酒と比較した場合、各香味の扱いは異なってくるのが面白いところです。 代表的なところでは、バターのような甘い匂いであるジアセチル(ダイアセチル)は、ビールや日本酒ではオフフレーバーとして敬遠されますが、ワインでは通常の香味特徴として捉えられます。

ビール好きであれば知っている方も多いオフフレーバーですが、本記事では発生原理までを少し細かく解説しています。ビールがいかに複雑で丁寧に造られている飲み物であるかを、少しでも感じて頂ければ嬉しいです!

醸造工程によって発生するオフフレーバーとその原理

多くの化学反応が並行する醸造工程では、不要な香気成分が発生してしまうことは実は避けられません。これら不要なものは、丁寧な期間管理と温度管理によって除去したり、他の物質に変換したりすることで、最終的に美味しいビールが完成します。

■DMS(ジメチル硫酸) :とうもろこし・野菜のような匂い DMSは麦芽中の物質が熱分解されることにより自然に生成しますが、仕込段階の麦汁煮沸工程で蒸気とともに揮散されます。そのため、煮沸が不十分な場合、DMSが麦汁の中に残存してしまったり、後の工程で新たにDMSが発生したりする恐れがあります。

■ジアセチル(ダイアセチル) :バター・ヨーグルト・古いご飯のような匂い ジアセチルは発酵段階で自然に生成する物質です。本来であれば熟成期間に酵母細胞内で還元され、香味に影響のない物質になります。 そのため「未熟臭」とも言われており、主にビールが十分に熟成されない場合に残存します。乳酸菌などの好ましくない微生物が増殖した際にも発生する可能性があります。

また、エステル・ホップ・フェノール類(やや燻製的な香り)の香気成分は、本来ビールの香味を特徴づけるものですが、ビアスタイルによって許容できる程度が大きく異なります。 必要以上に主張して他の香味を邪魔している、あるいは香りの質が悪くビール全体の香味を損なっているといった場合には、「エステル臭」「ホップ臭」と表現され、オフフレーバーとなってしまいます。

❖ 【重要!】保管状態によって発生するオフフレーバー どんなに丁寧に醸造されたビールでも、保管環境によってはオフフレーバーの原因物質が発生してしまいます。 全てのビールが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、皆さんの手で環境をしっかりと整えてあげましょう!

■トランス-2-ノネナール(酸化臭・老化臭):紙・ダンボールのような匂い 高温状態で長期間保存すると、容器内のわずかな酸素によってビール成分の酸化反応が促進され、酸化臭・老化臭の原因物質が生成します。 ビールは購入後すぐに冷蔵庫で保管するか、難しい場合は少なくとも20℃以下で保管すると良いでしょう。

ちなみに、この酸化反応にはLOX-1という酵素が関わることがわかっており、酸化によるオフフレーバーを抑制するために様々な研究がなされています。 「旨さ長持ち麦芽」~大麦育種からおいしさに挑戦~|サッポログループの研究トピックス|サッポロホールディングス (sapporoholdings.jp)

■日光臭 :日焼け臭・スカンク臭(※) ※筆者はスカンクの匂いを知らないため…「日焼けしたような匂い」の方がしっくり来ています。

ビールは日光にさらされると、紫外線によって苦味成分(イソα酸)の一部が分解し、ビール中の他成分と結合することで日光臭の原因物質が発生します。 ビールびんの色が茶色なのは、紫外線の影響を抑制するためです。 ちなみに、蛍光灯の光に長時間さらされても同じ現象が起こります。 びんビールは必ず、光の当たらない涼しい場所で保管しましょう。

❖ 最後に いかがでしたでしょうか。人々が一息つくお手伝いをしているビールですが、皆さんの口元に届くまでは、少しでも気を抜いてはいけないのです…! 醸造家をはじめとしたビールメーカーの人間は、ビールをわが子のように手塩にかけて育てています。ちょっぴり雑にビールを扱っている人を見かけたら、何も言わずにこの記事をシェアしてあげてくださいね。

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